木造店舗ならではのメリットと注意点!おすすめはどんな業種?

木造店舗ならではのメリットと注意点!おすすめはどんな業種?の画像

 木造の店舗は、しつらえによって落ち着いた雰囲気と木の温かみを感じられます。業種によっては木造にすることで、ほかの店舗との差別化を図ることができます。しかし、木造店舗も良いことばかりではなく、デメリットにも目を向ける必要があります。開業や店舗の新築を予定されている方は、メリットとデメリットを比較して木造の採用を検討しましょう。

木造店舗のメリット

 代表的な建物の構造は、木造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)があります。そのなかでも、木造は多くの一戸建て住宅や店舗、アパートで用いられる日本の伝統的な建築工法のひとつです。木の温かみを感じられるだけでなく、設計の自由度が高いという特徴があります。ここでは、そんな木造のメリットを紹介します。

工期が比較的短い

 木造住宅の工期は、一般的に3~4カ月程度です。一方、鉄筋鉄骨コンクリート造は8カ月程度かかります。このように、木造はほかの構造に比べて工期が短いというメリットがあります。ただし、日本の伝統的な在来工法で建築する場合、施工できる会社が限られてしまうケースもあるため注意が必要です。

建設費用を抑えられる

 建設費用が抑えられることも、木造のメリットです。木材は、鉄骨やコンクリートに比べて材料費が安く、軽いという特徴があります。そのため、運搬が容易で運搬費用や施工費用、人件費を抑えられます。一方、鉄骨造の場合、材料が重たいため、立地や地盤の状態によっては改良工事が必要になったり、解体費用が割高になったりすることがあります。したがって、一定規模までの建築であれば鉄骨造より木造のほうが、建設費用を抑えられるといえるでしょう。

SDGsなど環境問題に貢献できる

 木材を使用することは、地球温暖化の防止に貢献します。木材には二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭素を固定する特徴があり、伐採された木や加工された木材でも変わることはありません。そのため、木造で建物を建築することは地球温暖化を抑制し、カーボンニュートラルの実現につながるのです。
 また、SDGsや環境配慮への関心が高まっている近年では、事業者が住宅以外の建築を木造化することで、環境問題の対策に取り組んでいることを体現できる1つの要素となっています。

木材独自の香りや温かみが感じられる

 木にはそれぞれ香りや効能があります。たとえば、森林浴をしているような清々しい香りを持つヒノキは、心身をリラックスさせる効果があります。温泉施設の浴槽でヒノキが使用されているのは、ヒノキの持つリラックス効果や、ダニやカビの抑制効果を利用したものです。

 また、素足で木材に触れたとき、サラサラとした木材の気持ちよさと柔らかさを感じたことはありませんか。これはほかの構造にはない木材独自のメリットといえます。また、木材には無数の空洞があり、小さな穴のなかには空気が入っています。この空気が断熱材の役割を果たしているため、木材は保温効果が高いのです。

 室内に構造の木材が見えるような工法や意匠設計にすることで、香りや保温効果などのメリットを最大限に感じることができます。

店舗イメージの向上が期待できる

 木材は人の目に対する刺激が少なく、安らぎを感じさせる効果が期待できます。また、先述したように環境問題にも配慮しているため、店舗のイメージ向上も期待できます。たとえば、設計事務所や保育園、幼稚園、パン屋、カフェなど、木の温かみを活かした店舗づくりすることで、多くの方から好感を得られるでしょう。
 また、内装を木質化した店舗デザインを採用することで写真映えも期待でき、SNSや口コミサイトを活用した集客活動に好印象効果を期待することが可能です。

税制の優遇や補助金制度が活用できる

 国交省や環境省、農林水産省、各自治体では、木造建築で使える主な税制優遇措置や補助金制度を設けており、次のようなものがあります。(各制度等は2025年6月時点の情報です。)

 木材を使用した店舗は、環境の負荷を抑えながらイメージ向上や暮らしの質を高める有効な選択肢といえます。上記の補助金を利用することで初期費用の負担を減らし、木の温もりあふれる、理想の店舗を実現できるでしょう。

減価償却期間が短くて節税効果が高い

 木造店舗のメリットのひとつに「減価償却期間の短さ」があります。木造建築は法定耐用年数が約20年と短いため、耐用年数が30年以上の鉄骨造や40年以上の鉄筋コンクリート造と比べて早く建築費を経費として計上することが可能です。これにより、経費計上による所得圧縮が可能で、開業当初から高い節税効果を期待できます。

木造店舗の新築の注意したいこと

 一見するとメリットの多い木造ですが、建てる際には注意点もあります。ここでは、次の注意点について解説します。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。

  • 鉄骨や鉄筋と比べて法定耐用年数が短い
  • 防音性能が低い
  • 耐震性への考慮が必要
  • 火災時の延焼リスク
  • 建物の大きさによっては高価格になる

法定耐用年数

 木造の注意点として、前述の通り鉄骨や鉄筋と比べて耐用年数が短いことが挙げられます。耐用年数には、「法定耐用年数」と「実際の耐用年数」があります。法定耐用年数とは財務省令で定められた、減価償却資産(固定資産)を通常の用途で使用できると見込まれる年数のことで各構造の法定耐用年数は次のとおりです。

  • 木造 22年
  • 軽量鉄骨 27年
  • 重量鉄骨 34年
  • 鉄筋コンクリート 47年

 こちらを見ると、木造はほかの構造に比べて法定耐用年数が短いことがわかります。ただし、法定耐用年数は実際の建物としての寿命とは異なります。したがって、木造でも適切なメンテナンスを行うことで建物の寿命を延すことが可能です。

防音性への対策

 防音性の低さにも注意が必要です。一般的に木造は防音性能が低く、鉄骨造やコンクリート造に比べて音が響きやすいといわれています。そのため、業種によっては近隣トラブルになるリスクがあることに注意が必要です。しかし、壁や床に遮音材を使用したり、間取りを工夫したりすることで防音性の低さをカバーすることができます。

耐震性への考慮

 耐震性への考慮が必要です。他の構造に比べて、木造の耐震性が弱いことは事実であり、耐震性を重視した在来工法やツーバイフォー工法の採用が推奨されます。また、これから木造店舗を建築する場合は、新耐震基準をクリアする必要があり、これは震度6強から7程度の地震でも倒壊しないレベルです。

 2000年6月には「2000年基準」が設けられたため、木造建築はより厳しい耐震基準が求められるようになっています。しかし、木造住宅の建築技術は日々進化しており、耐震性と設計の自由度を両立した工法の普及も進んでいます。

火災時の延焼対策

 火災時の延焼リスクも注意すべきポイントです。木材は他の構造と比較して、火災時の延焼リスクが高くなります。延焼とは、出火している建物からほかの建物に燃え広がることです。つまり、住宅が密集している地域では、外壁材や内装材には耐火性能や防火性能が備わったものを選び、火災報知器やスプリンクラーの設置、避難経路の確保など、法令で定められているもの含め延焼対策が必要です。

建物の大きさによっては高価格になる

 建築費用を抑えられると紹介しましたが、大空間や高層の木造建築は、かえって高額になる場合もあります。大空間建築は、一般的な住宅向けの材料だけで建築できず、既に技術が確立されている鉄骨造・鉄筋コンクリート造に比べて、耐火性能や耐震性能を確保するための特別な設計や高価な材料が必要になります。また、木造と他の構造では法規制の基準が異なり、建築基準法に基づく性能の証明が必要で、認証取得に時間と費用がかかります。

 建築したい建物の構造ごとのコストパフォーマンスを検証したうえで、木造を採用した方が良いでしょう。

木造店舗に向いている業種

 木造店舗は、温かみや自然なリラックスできる雰囲気を好む業種に適しています。たとえば、飲食店、美容室、雑貨店などがそういった業種にあたります。ここまでに紹介したメリット・デメリットを踏まえたうえで、木造店舗に向いている業種に紹介いたします。

飲食店・カフェ

 木造の温かみを活かした飲食店やカフェは、多くの方に心地よさや安心感を与えます。さらに、建具や家具、インテリア、観葉植物などにこだわると、より雰囲気を高められるでしょう。自然食品やオーガニック製品を扱うカフェでは、ブランドイメージを向上させる効果も期待できます。

美容室やサロン

 木材にはリラックス効果があるため、美容室やネイルサロン、エステサロンなどにも適しています。土地周辺の状況に応じて、防音性・遮音性を高める工夫や、外からの視線を考慮することで、より癒しの効果を高められるでしょう。

雑貨店・セレクトショップ

 自然素材である木材は周囲と溶け込みやすく、さまざまな色柄ともうまく馴染みます。自然素材でできた雑貨や洋服との相性もよいため、商品の魅力をうまく引き立てるでしょう。また、木造で建てられた店舗は穏やかな印象を与えるため、親しみやすい空間を演出することが可能です。

その他木造建築化がおすすめの建物

 木造建築は幅広い業種に適しています。コスト面やデザイン性、環境配慮の観点から、近年は福祉施設や教育施設などでも木造化が進んでいます。木造建築にすることでメリットを発揮する建物をご紹介いたします。

小規模事務所

 木の香りにはリラックス効果があり、従業員のストレス軽減や集中力向上につながります。また、木の温かみが創造性を刺激するため、商品開発や新しい事業のスタート、ワークショップスペースとしても活躍するでしょう。設計事務所やデザイン事務所のようなお客様が来訪する事務所であれば、ブランドイメージ向上や事務所のデザイン性が評価され、顧客満足度アップも期待できます。

宿泊施設(ゲストハウス、コテージ)

 安心感と安らぎを与える木造建築は、宿泊施設にも最適です。自然に囲まれた場所であれば、立地を活かしてロッジのような施設にするのがおすすめです。周囲の景観と調和した、非日常的な時間を味わえるでしょう。また、古民家を改装したゲストハウスも人気があります。

 ただし、古民家を改装する場合は耐震性を強化したり、防音性能・断熱性能を高めたりする工夫が必要です。

木造店舗を建てるには

 木造店舗を建てるためには工務店や建設会社に相談する必要があります。同じ木造でも一般的な住宅とは異なるため、コストパフォーマンスや法令適合など考えなければいけない要素も少なくありません。住宅以外の建築実績がある企業への相談をおすすめします。

 また、木造の工法によっても実現できる空間には大きな違いがあります。木造でも柱や壁を減らして最大限の広さを確保したい場合は、高耐震・大空間を強みとするSE構法なども検討しましょう。さらに、出店場所や土地選びなども包括的に相談できる相談先であれば、よりスムーズに進めることができるため、信頼できる企業を探すところから始めてみましょう。


小田急ハウジングは、「SE構法登録施工店」「大規模木造建築ネットワーク」加盟企業として、事業用建築の木造化を進めています。
店舗・倉庫・事務所・集合住宅・併用住宅・公共施設などの新築は、是非お気軽にご相談ください。


小田急の新築事業はこちらから