中大規模木造建築のメリット・注意点。ニーズが高まる理由や建築会社の選び方を解説
中大規模建築の木造化は、省エネ効果や木の温かさを感じられる点から注目が集まる一方で、設計・施工の難易度が高く、会社によって完成度に大きな差が生まれます。
木造建築はデザイン性や調湿性に優れる反面、防音性や気密性は他構造と比較すると特に注意が必要になります。木造の特性を正しく理解したうえで、用途や規模に応じて検討することにより、満足度の高い建築につながります。
中大規模建築の木造化が増えている理由
「木造建築」と聞くと戸建て住宅や木造アパートを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、近年では中大規模の建築物を木造で造るニーズが増加傾向にあります。
2020年の東京オリンピックで使用された新国立競技場は、屋根が木材で建築されています。さらに、令和5年に開館した水戸市民会館には木造大架構を採用した広場があり、柱がない4層の吹き抜け空間となっています。このように国や自治体の公共施設のほか、多層階の事務所なども木造化が進んでいるのです。
では、なぜ中大規模建築の木造化が増えているのでしょうか。理由はいくつか考えられますが、大きな理由は「建築基準法の改正」と「脱炭素化社会の実現」です。それぞれ項目ごとに解説します。
建築基準法の改正
まず中大規模建築とは、店舗、事務所、福祉施設、保育園などの事業用の用途で建てられた、比較的規模の大きな(2階以上、あるいは延べ床面積300㎡を超える)建物のことです。その中で、構造体に木材を使用したものが中大規模木造建築となります。
「中大規模建築」では、これまで鉄骨造、鉄筋コンクリート造が主流でした。しかし、2025年4月の建築基準法の改正で、中層建築物を中心に耐火性能や避難安全性の考え方が見直されたことで、木造建築の幅が広がり建築数が増加していると予想されます。
建築基準法の改正における木造建築に関する内容は下表のとおりです。
| 項目 | 改正内容 |
| 防火規定の変更 | 延べ面積3,000㎡超の大規模建築物でも、区画防火・燃えしろ設計など新たな方法を導入することで木材を構造や内装に活用できる。 |
| 中層木造の耐火緩和 | 従来は、異なる階数の建築物で同水準の耐火性能が求められていたが、改正により5〜9階の最下層を90分耐火性能で設計できるよう合理化された。 |
| 構造計算の緩和 | 建物の高さや規模区分が整理され、一定条件での構造計算方法が明確化された。 |
| 高さ規制の緩和 | 木造3階建て建築物は高さ13m以下を前提としていたが、見直されて高さ16m程度までを想定した制度設計が可能。 |
建築基準法の改正は、中大規模建築の木造化の追い風となっています。一方で、従来から構造計算が必須だった建築物については、引き続き十分な審査が行われるため注意が必要です。
参考:国土交通省 |改正建築基準法について
脱炭素化社会の実現
日本では古くから建築物を木造で建てていましたが、戦争により都市の大部分の建物が焼失したことから、火災に強い鉄骨造や鉄筋コンクリート造が急速に広がりました。
このような背景から、木造建築=低層住宅という現在のイメージが定着したと考えられます。しかし、最近になって「脱炭素社会の実現」という観点から、国は建築分野での木材利用を進めています。
建築分野は、資材製造や施工段階で多くの二酸化炭素(CO2)を排出するとされています。木造建築は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて資材製造時のCO2排出量が少なく、建物自体が炭素を固定する役割が評価されているのです。
また、木は成長する過程でCO2を吸収する働きがあり、温室効果ガスの排出を削減する効果が期待されています。日本は2030年に温室効果ガスの46%削減を目指しており、中大規模建築の木造化を進めることで、気候変動に起因する異常気象を抑制し、省エネ対策を加速させたいという狙いもあります。
中大規模建築を木造化した場合のメリット・注意点

これまで、中大規模建築物は鉄骨造や鉄筋コンクリート造で造られてきましたが、木造建築には環境への配慮や居住性の高さなど多くのメリットがあります。その一方で、建築主が理解しておくべき注意点もいくつかあります。
木造化のメリット
まずは、中大規模建築を木造化した場合のメリットについて詳しく説明します。
コストダウンが期待できる
木材は軽い、加工しやすい、十分な強度を確保しやすい、断熱性に優れているという特徴があります。また、プレカット技術の向上によって運搬が容易になり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて施工期間が比較的短く済ませられます。
そのため、結果的に建築費用を安く抑えられる場合があります。
二酸化炭素の放出を抑制できる
先述したように、木造建築は鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて、材料製造から建築に至るまでに発生する二酸化炭素の排出量が少なく、環境に優しい建築方法といえます。事務所や店舗を木造建築にすることで周辺地域の環境への貢献をアピールできるため、企業や事業イメージの向上にも繋がるでしょう。
快適性が向上する
木造建築には、「あらわし」などの作りにより他の構造ではできない木の温かみや質感を感じさせられます。木材そのものが空間に優しさと安らぎを与え、建物内に滞在する方に高いリラックス効果をもたらすでしょう。
さらに、木材には優れた調湿効果があり、内装仕上げ材として使用すると室内を快適に保つことができます。湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、乾燥しているときは水分を放出するという特性があり、年間を通じて快適な湿度環境を維持しやすくなります。このような特性から、木材の価値が改めて見直されているのです。
木造化の注意点
木造化に多くのメリットがあることを理解したところで、木造化の注意点についても見ていきましょう。
耐震性・耐久性に高い専門性が求められる
木造建築は、他の構造に比べて耐震性・耐久性が低いと思われがちですが、耐震構造技術を採用し、それに適切な構造計算と設計を行えば震度7でも倒壊を防ぐことが可能です。中大規模の木造建築を実現するには高度な構造計算と設計力が不可欠でその耐震技術を含めた専門性が求められます。
また、木材は湿気を吸収するため、雨漏りや内部結露が発生すると内部が腐敗して強度が低下する可能性があります。建物を維持するためには防蟻などのメンテンナンスが必要ですが、通常のメンテナンスを実施することで法定耐用年数を超える耐久性が期待できます。
適切な防音対策が必要になる
壁内に空洞が多く、音を通しやすい構造の木造建築は、外部の音が室内に伝わりやすいため、静粛性が求められる執務スペースや会議室、店舗併用住宅の居住区画などでは近隣や交通などの「音」の対応も考慮する必要があります。
他の構造体同様に木造建築においては防音対策が一つの課題です。必要に応じて二重サッシを採用したり、防音フローリングを使用したりと、複数の対策を組み合わせて防音性を高める工夫で騒音リスクを軽減できます。
火災時の延焼リスクと安全性
木造建築は「火に弱いのではないか」と心配されることがあります。確かに木材は燃える材料であり、火災時の延焼リスクがゼロではありません。しかし現在の木造建築は、国の定めた建築ルールに基づき、火災時の安全性が確保されるよう設計・施工されています。具体的には、燃え広がりを抑える構造や、一定時間建物の強さを保つための工夫が求められており、木造であっても安全性が確認された仕様で建てられています。
また近年は、火に強い性能を持つ木材や、防火性能を高める建材・工法も普及しています。これらを適切に組み合わせることで、万が一火災が発生した場合でも、被害の拡大を抑えることが可能です。そのため、火災のリスクを正しく理解し、定められた対策を講じて建てられた木造建築であれば、他の構造と比べても安全性に大きな差はありません。木造建築は、安心して選択できる建築方法のひとつと言えるでしょう。
建物規模や用途によっては高価格になる
コストダウンが期待できると紹介しましたが、すべての木造建築が低コストでできるわけではありません。大空間や高層の木造建築は、かえって高額になる場合もあります。というのも、大きな空間を実現するためには対応できる設計や高価な材料が必要になります。また、木造と他の構造では法規制の基準が異なり、建築基準法に基づく性能の証明と認証取得に時間と費用がかかることがあります。
建築したい建物の規模から、建築費用を比較して構造を決定すると良いでしょう。
ただし近年、鉄やコンクリート価格の高騰、特に輸入に頼る原材料価格の高騰や品不足に伴う建設費の高騰により、事業用建築の計画中断や見直しが発生しています。
その点で木造は、比較的安定した材料の供給が行われており、計画の中止や見直しなどの事業に与えるリスクを避けることも、可能となっています。
中大規模木造建築を依頼すべき建築会社の特徴
前述のとおり事業用木造建築が増えてきていますが、中大規模木造建築を依頼できる建設会社は住宅を建てるハウスメーカーと比較すると、それほど多くありません。
事業用木造建築物は専門的な知識や経験が必須であり、後のトラブルを防ぐためにも建設会社選びが非常に重要です。どんな会社に依頼すべきか具体的な特徴をお伝えします。
中大規模建築で木造化した実績がある
建築会社を選定する際は、3階建て以上の木造建築や耐火木造、大空間を伴う木造建築について、具体的な施工事例・実績があるかどうかが重要な判断材料となります。中大規模木造建築は設計・施工の難易度が高く、経験の有無が品質や安全性に直結するためです。
また、計画する建築物の用途や性格によって、適した建築会社は異なります。たとえば、安全性や回遊性が求められる保育園では、児童福祉法などで設置基準が定められているため、デザインの提案力だけでなく施工実績がある会社が適しています。
一方で、大規模なホールや展示場などでは、施工体制や工程管理に強く、量産体制を整えている会社を選ぶことで、納期やコスト面を気にせず任せられるでしょう。
さまざまな工法に対応している
中大規模建築の木造化で店舗・オフィス・施設などを依頼する場合は、多様な工法を駆使し、木材の特性を活かした施工力を持つ企業に依頼することをおすすめします。
建築したい建物に合わせて柔軟に工法を提案できたり、集成材や異素材(鉄骨造など)との組み合わせに対応できたりと、高度な技術を持つ会社は依頼者の希望にも柔軟にも対応できるためです。
多様な実績をもつ建築会社であれば、将来的なメンテナンスや修繕も安心して任せられるでしょう。
小田急ハウジング 施工事例
小田急ハウジングは、「SE構法登録施工店」「大規模木造建築ネットワーク」加盟企業として、事業用建築の木造化を進めています。
店舗・倉庫・事務所・集合住宅・併用住宅・公共施設などの新築は、是非お気軽にご相談ください。


