「木材利用促進法」とは?目的・活用できる補助金を解説
近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進む中で、オフィスや店舗、倉庫、共同住宅などの建築計画においても木材利用への注目が高まっています。
こうした背景のもと、2021年に改正された「木材利用促進法」では、公共建築物に加えて民間建築物も木材利用促進の対象となりました。木造・木質化は、環境負荷の低減だけでなく、建築物の付加価値向上や地域社会への貢献にもつながる取り組みとして期待されています。
本コラムでは、「木材利用促進法」の概要や制定・改正の背景、木造・木質化によるメリット、活用できる可能性のある補助金制度について解説します。
木材利用促進法とは?2021年の改正で民間建築物も対象に
「木材利用促進法」の正式名称は「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」といい、建築物における木材の利用を促進することで、地球温暖化対策や森林の適切な管理、そして地域経済の活性化を目指すものです。
大きな転換点となったのが、2021年の法改正です。それまでの法律は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」という名称で、対象が国や地方公共団体が建てる公共建築物に限定されていました。
改正により法律の名称も変更され、対象が「建築物一般」へと大幅に拡大され、個人の住宅や民間の商業施設、オフィスビルなど、あらゆる建築物で木材利用が推進されるようになりました。幅広い建築物を対象に、木造化・木質化を後押しする支援制度の活用機会も広がりました。
なぜ今、木材利用なのか?法律が制定・改正された背景と目的
地球温暖化対策や資源循環への関心が高まり、国内にある森林資源を有効活用することの重要性が見直されています。木材利用の拡大は脱炭素社会の実現だけでなく、林業や木材産業の活性化、地域経済への貢献にもつながります。
木材利用促進法は、このような社会的課題に対応しながら、持続可能な社会の実現を目指して制定・改正されました。環境、経済、地域社会の発展に貢献する取り組みとして、木材利用の役割はますます大きくなっています。
この法律は、持続可能な社会の実現に向けた重要な柱の一つとしても位置づけられています。地球環境の保全、地域経済の発展、そして健康で快適な生活空間の創造。これらすべてに貢献する木材利用の重要性が高まっているのです。
制定から改正までの経緯
木材利用促進の動きは、2010年に制定された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に遡ります。この法律は、国や地方自治体が建てる公共建築物において、木材の利用を積極的に進めることを目的としていました。
しかし、地球規模での脱炭素化の動きが加速する中で、公共建築物だけではなく、より広範囲での木材利用が求められるようになりました。2021年の法改正により、名称も変更され、対象が「公共建築物等」から「建築物一般」へと拡大されたことで個人の住宅や民間の商業施設なども木材利用促進の対象に含まれることになったのです。
改正は脱炭素社会の実現をさらに加速させるための重要な一歩であり、木材利用がより身近なものとなるよう、国の政策として強力に推進していく姿勢を示しています。
法律が目指す3つの目的
木材利用促進法が目指すゴールは、環境問題への対応だけでなく、日本の経済や私たちの暮らしにも深く関わっています。この法律は、大きく分けて3つの重要な目的を掲げ、多角的な視点から木材利用を推進しています。
目的1.脱炭素社会の実現への貢献
木材利用促進法の最も重要な目的の一つは、脱炭素社会の実現に貢献することです。樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、その炭素を木材の中に貯蔵します。この「炭素貯蔵効果」は、木材が建材として使われた後も継続し、建物が存続する限り炭素を固定し続けます。つまり、木造建築物を増やすことは、まるで「第二の森林」や「街の森林」を創り出すようなものであり、大気中のCO2削減に大きく貢献するのです。
また、木材は鉄やコンクリートといった他の建材と比較して、製造・加工時のエネルギー消費量が格段に少ないといわれ、それに伴うCO2排出量も抑えられます。木材はライフサイクル全体で見ても環境負荷が低い建材であり、木材の利用を促進することは、地球温暖化防止に繋がる選択と言えます。
目的2.国内の林業・木材産業の活性化
戦後の拡大造林によって植えられた木々が成熟し、まさに「伐り時」を迎えています。こうした豊富な森林資源を有効活用し、「植える→育てる→収穫する→使う」という持続可能な森林資源のサイクルを確立することを目標としています。
国産材の需要が高まることで、林業や製材業、木材加工業といった関連産業全体が活性化し、新たな雇用が創出されます。これにより山村地域の経済が潤い、若者の就労機会が増えることで、地方の過疎化防止にも貢献します。
また、木材を計画的に伐採し、適切に管理された森林は、土砂災害の防止や水源かん養といった多面的な機能を発揮し、国土の保全にも繋がります。 国産材の利用を推進することは、私たちの豊かな自然環境を守り、地域社会を支える好循環を生み出す重要な鍵となるのです。

水源かん養とは
森林や田んぼなどが雨水を土壌に蓄え、洪水の緩和、川の流量の安定(渇水の防止)、そして水質の浄化という大切な働きをしながら、良質な水資源を長期にわたって育み、下流へ送り出す仕組みのことです。
参考:林野庁ホームページ
目的3.木の空間が利用者の快適性向上に
木材利用促進法は、環境や経済だけでなく、私たちの暮らしそのものにも良い影響をもたらすことを目指しています。木の持つ温かみのある見た目や、触れた時の心地よい手触り、そしてほのかに香る木の匂いは、リラックス効果やストレス軽減効果をもたらすことが科学的にも証明されています。例えば、木材に含まれるフィトンチッドという成分には、心身を落ち着かせる効果があるとされており、日々の疲れが癒されると感じる方は多いでしょう。
さらに、木材には優れた調湿作用があります。室内の湿度が高い時は水分を吸収し、乾燥している時は放出することで、一年を通じて快適な湿度を保ちます。この働きにより、夏は湿気を抑えて涼しく感じられ、冬は乾燥を防いで暖かさを保ちやすくなります。
このように、木材に囲まれた空間は、視覚的・嗅覚的・触覚的な心地よさに加え、快適な温湿度環境を提供し、心身ともに健康で豊かな暮らしを実現してくれるのです。
建築物を木造・木質化する5つのメリット
木造・木質化は、脱炭素への貢献だけでなく、利用者にとって快適な空間づくりや地域経済への貢献など、多面的なメリットがあります。ここでは、事業用建築における木造・木質化の主なメリットを5つご紹介します。
メリット1.【環境】炭素を貯蔵し、地球温暖化防止に貢献する
木造建築を選ぶ最大の環境メリットの一つが、前述の「炭素の貯蔵」です。樹木は光合成を通じて大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、その炭素を幹や枝葉に蓄積して成長します。木材として家や建物に使われた後も、その炭素は木材の中に固定され続けます。つまり、木造建築物は「第二の森林」として機能し、炭素を貯蔵し続ける効果があるのです。
メリット2.【環境】製造・加工時の環境負荷が少ない
木材は、その製造・加工過程においても、他の主要な建築材料と比較して環境負荷が非常に小さいという特徴があります。鉄やコンクリートといった材料は、製造に高温での加熱を必要とし、その過程で大量のエネルギーを消費し、多くの二酸化炭素を排出します。一方で木材は、太陽のエネルギーで育つため、伐採後に必要な加工も比較的少ないエネルギーで行うことができます。
メリット3.【社会】持続可能な循環型社会の形成に寄与する
木材は、適切に管理することで永続的に利用できる「再生可能な資源」です。日本の森林は、戦後に植えられた木々が成長し、今まさに利用期を迎えています。これらの木々を伐採し、木材として活用することは、森林の健全な育成を促し、新たな植林へと繋がる持続可能な「植える→育てる→収穫する→使う」というサイクルを形成します。
特に国産材の利用を増やすことは、日本の森林資源の有効活用に直結します。手入れが行き届いた森林は、土砂災害の防止や水源かん養といった多面的な機能を発揮し、国土の保全にも大きく貢献します。単に建材を選ぶだけでなく、資源を枯渇させない持続可能な社会の形成、そして豊かな自然環境を守り育てるという、社会的な意義を併せ持っているのです。
メリット4.【快適性】木の空間が利用者満足度の向上につながる
健康面や快適性は、メリットの中でも重視したいポイントです。前述のとおり、木材は私たちの五感に優しく働きかけ、心身に良い影響を与えることが科学的にも示されています。木目の美しい揺らぎは視覚的なリラックス効果をもたらし、木の香りに含まれる「フィトンチッド」などの成分は、鎮静作用やストレス軽減効果が期待できます。まるで森林の中にいるような心地よさを、自宅で日常的に感じることができるでしょう。
また、日本は高温多湿の夏と乾燥しやすい冬が特徴的な気候であり、住まいには優れた湿度管理が求められます。木材は細胞内に無数の空隙を持つため、室内の湿度が高いときには空気中の水分を吸収し、乾燥時には蓄えた水分を放出する「調湿作用」を発揮します。
この働きにより、室内の湿度変化を緩やかにし、結露やカビの発生を抑える効果が期待できます。また、快適な湿度環境を保つことで、住み心地の向上や健康的な暮らしにもつながります。日本の気候に適した自然素材として、木材は快適な住環境づくりに大きく貢献しています。
メリット5.【経済】地域の林業を活性化させる
国産材や地域材を積極的に選ぶことは、日本の林業や地域経済全体に大きな好循環を生み出すことにつながります。木材の需要が高まることで、林業に携わる方々の所得向上や、新たな雇用創出が期待できます。これにより、若い世代が林業に興味を持ち、後継者不足の解消にも繋がり、日本の森林が未来にわたって適切に管理されていく基盤が強化される可能性があります。
地域材の利用は林業だけでなく、製材、加工、流通など関連産業の活性化にもつながり、建物そのものの価値向上に加え、森林資源の循環利用や地域経済への貢献も期待できる取り組みといえるでしょう。
【具体例】木造・木質化で活用できる補助金制度
木造建築が推奨される中、国や地方自治体は木造・木質化を後押しするためのさまざまな補助金制度を用意しています。これらの制度を活用することで、初期費用を抑えながら、より健康的で環境に優しい建築を実現できる可能性があります。この記事では代表的な補助金制度の例と注意点をご紹介します。
※2026年7月時点の情報です
【林野庁】林業・木材産業成長産業化促進対策交付金
林野庁が管轄する「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」は、林業・木材産業の成長と、国産材の安定供給体制の確立を目指す国の代表的な補助金制度の一つです。なかでもCLT(直交集成板)のような新しい木材技術の導入や、都市部での木材利用促進を目的とした先進的な取り組みを支援しています。
具体的な対象としては、高性能な木材加工施設の整備や、新たな木質建材の開発、供給体制の効率化などが挙げられます。過去には、大規模な非住宅建築物での木材利用や、地域材を活用したサプライチェーンの構築などが採択されています。
参考:林野庁ホームページ「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」
【国土交通省】サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)
国土交通省が主導する「サステナブル建築物等先導事業」、特に木造建築に焦点を当てた「木造先導型」は、先駆的な木造建築プロジェクトを支援する重要な補助金制度です。この事業は、構造や防火に関する先進的な技術の導入、高い省エネルギー性能、そして木材利用の普及に貢献するモデルとなる建築物を評価し、補助対象としています。
「木造先導型」は、新しい技術やデザインを取り入れた大規模な木造建築や、地域における木造化のモデルとなるようなプロジェクトが対象となることが多いです。そのため、地域の建設会社や設計事務所が主体となって、先端的な技術を導入する際に活用するケースがほとんどです。
この補助金は、将来の木造建築の可能性を広げ、技術革新を促す役割を担っています。もし、先駆的な木造建築にご興味があれば、建設会社や設計事務所に相談し、この制度を活用できるかどうかを検討してみるのも良いでしょう。
参考:サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)実施支援室ホームページ
都道府県や市町村による独自の補助事業
国が設けている補助金制度以外にも、多くの地方自治体が独自の木材利用促進のための補助事業を実施しています。例えば、神奈川県では、県産材の利用を条件とした住宅建設に対する補助金や、県内産木材を内装に使用するリフォームへの支援など、地域に根ざした取り組みが見られます。
このような地方自治体独自の補助金は、地域材の需要喚起を通じて地元の林業や木材産業の活性化を図る目的があります。読者の皆様がお住まいの都道府県や市町村でも、同様の制度が用意されている可能性は非常に高いです。ぜひ、お住まいの自治体のウェブサイトで「〇〇県(市町村名) 木材 補助金」といったキーワードで検索してみてください。
また、地元の工務店や建設会社は、地域の補助金制度に詳しい場合が多く、直接相談することもおすすめです。
補助金を利用する際の注意点
補助金制度は、費用負担を軽減する大きな助けとなりますが、利用する際にはいくつかの重要な注意点があります。これらを事前に把握しておくことで、スムーズな手続きと確実に補助金を受け取ることができます。
- 申請時期を確認する
多くの補助金は契約前または着工前の申請が必要です。
計画初期段階から情報収集を進めましょう。 - 公募期間・予算を確認する
補助金には募集期間や予算上限があります。
予算到達により早期終了となる場合もあります。 - 最新の要件を確認する
補助対象や条件は毎年度変更される可能性があります。
必ず最新の公募要領を確認しましょう。 - 専門家へ相談する
申請には図面や各種資料が必要となる場合があります。
建設会社や設計事務所に相談しながら進めると安心です。
なお、ご自身の計画に補助金や助成制度を適用できるか、その制度が申請受付されているかどうかの最新かつ詳細な情報は、必ず各制度の公式サイトをご確認いただくか、建設会社や専門家にご相談ください。
木材利用促進に向けたその他の取り組み
木材利用促進法は、補助金制度といった金銭的な支援だけでなく、社会全体の意識を高め、木材利用を支える協力体制を築くことも目指しています。一時的なブームで終わらせるのではなく、国民的な運動として木材利用を持続的に進めていくための土台作りをしているのです。
建築物木材利用促進協定制度
木材利用促進法では、「建築物木材利用促進協定制度」という新しい仕組みが設けられました。これは、木材を積極的に利用して地域社会に貢献したいと考えている民間事業者(例えば、大規模な施設を開発するデベロッパーや企業など)が、市町村といった地方公共団体と協定を結び、計画的に木造建築物を増やしていくための制度です。
一般の個人が直接活用するものではありませんが、民間事業者と自治体が連携して木材利用を推進することで、木造のオフィスビルや商業施設、マンションなどが計画的に増えていくことが期待されています。単なる補助制度ではなく、行政と企業が一体となって木材利用を促進し、木造建築を社会に定着させる仕組みとして大きな役割を担っている制度といえるでしょう。
「木材利用促進の日(10月8日)」と「木材利用促進月間(10月)」
国民の皆さんの木材に対する意識を高めるため、「木材利用促進の日」と「木材利用促進月間」が法定化されました。10月8日を「木(十と八で『木』)」の日とし、10月を「木材利用促進月間」と定めています。
この期間中には、国や自治体、そして関連するさまざまな団体が、木材の良さや重要性を伝えるシンポジウムやイベント、子どもたちが木に触れて学ぶ「木育活動」などを全国各地で展開しています。これにより、多くの方が木材に親しみ、その価値を再認識する機会が増えています。木材利用が、私たちの社会全体で大きなムーブメントになっていることを実感できる取り組みです。
まとめ:木材利用促進法を理解し、理想の建築を実現しよう
木材利用促進法は、脱炭素社会の実現や森林資源の循環利用を推進するために、建築物への木材利用を後押しする法律です。2021年の法改正により、公共建築物に加え、オフィスや店舗、倉庫、共同住宅などの民間建築物も対象となりました。これにより、木造・木質化はこれまで以上に身近な選択肢となっています。
木造建築には、環境負荷の低減、快適な空間づくり、地域経済への貢献など多くのメリットがあります。また、補助制度を活用できる場合もあり、事業用建築の新築や建替えにおいて注目されています。
事業用建築をご検討の際は、木造・木質化の可能性や補助制度について建設会社や専門家に相談しながら、最適な建築計画を検討してみてはいかがでしょうか。
小田急ハウジング 施工事例
集会所
木造ならではのぬくもりが広がる集会所。丸窓と現しの梁が印象的な、やさしい表情を持つ建物です。構造にはSE構法を採用し、安心感とデザイン性を両立。
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小田急ハウジングは、店舗・事務所・倉庫・共同住宅・福祉施設・公共施設など、さまざまな事業用建築の木造化・木質化に対応しています。
敷地条件や用途に応じた木造建築のご提案から補助制度に関する情報提供までサポートしておりますので、事業用建築の新築や建替えをご検討の際はお気軽にご相談ください。
